羊の夜

羊の夜

人々は楽しそうに 無機質に通りすぎる
前だけを見て通りすぎる
都会の喧騒 夜の街

誰も気づかない あたしだけには見える
ビルの山の頂上で ブランコに乗っている羊が

誰も聞こえない あたしには聞こえた
高らかにこだまする 嘲るがごとく唄う羊の声が

「君も早くお逃げなさい この街の風はは冷たすぎるよ」

みんなは上を見ようとしない
みんなは声を聞こうとしない
荒んだ街の 霧の夜

夜の公園 ジャングルジム 空回りの回旋塔 
闇に飲まれたブランコに 羊がゆらゆら揺れている
近道していく早足の あたしの耳元で囁く唄

「君も早くお逃げなさい この街の空は明るすぎるよ」

あたしはいつでも上を見て
あたしはいつでも唄を聴いて
狂った街の 冬の夜

誰にも見えない羊が唄う
誰にも聞こえない羊の忠告

「君も早く お逃げなさいな」

1997-1999 創作

コメント

タイトルとURLをコピーしました