砂の羽
暗い暗い路を行く 高い高い塀があった
塀の向こうには 何がある?
蒼い月が見つめてる 瞬きもせずに見つめてる
目を逸らせない 自分がいた
冷たい空気を呑み込んで 塀の向こうを 想像するの
吐息も白く凍りつく この夜の果てにお別れを
砂で出来た 羽を広げて どこまで上に 行けるかしら
いつしか羽は 朽ちてゆくでしょう それでももっと 上へ 上へ
クリーム色の肌を刺す 痛い風に 切られながら
いつしか羽は 無くなるけれど それでもきっと 上へ 上へ
深い深い海を歩く 赤く光る うつぼの目
あたし命はいらないけれど 翼だけは 食べないで
心が醒める 星の夜 流れ星を追いかける
彼らは笑って 言いました
あなたの羽で 僕たちと 旅することは出来ないよ
砂の羽が 少し崩れた
黒い夜空に 羽を広げて 星屑たちを 追いかけた
いつしか光は 見えなくなっても かならず きっと 上へ 上へ
赤いうつぼが 口を開けても 深い闇に 包まれても
褐色の翼は 羽ばたくでしょう 何時しか あたしは星を見下ろす
1997-1999 創作
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